My Adler Story

完璧主義で自分を追い詰めていた私が、勇気づけで手に入れた「未来への希望」

Tags: 勇気づけ, 完璧主義, 自己肯定感, 職場の人間関係, アドラー心理学

完璧主義という名の重荷を背負っていた日々

私は長年、仕事において「完璧でなければならない」という強いこだわりを持って生きてきました。営業職として成果を出すことはもちろん重要でしたが、それ以上に、提出する資料の隅々まで、顧客への説明の言葉遣い一つ一つまで、一切の妥協を許しませんでした。

その結果、納期ぎりぎりまで資料を修正したり、商談前に何時間もシミュレーションを繰り返したりと、常に自分を追い詰める日々でした。周りからは「仕事が丁寧だね」「完璧主義だね」と言われることもありましたが、当の本人は常にプレッシャーと焦燥感に苛まれていました。少しでもミスがあると、必要以上に自分を責め、「なぜもっとできたはずなのに」と自己肯定感を下げてしまうのです。

部下を持つ立場になってからは、その完璧主義はさらに周囲にも影響を及ぼしました。部下の仕事ぶりにも同じレベルの完璧さを求めてしまい、少しのミスも見逃せず、厳しい言葉をかけてしまうことが頻繁にありました。その結果、チーム内の雰囲気は重苦しく、部下たちも私に萎縮しているように感じられました。

成果は出ていたものの、心の中は常に満たされない不安と、人間関係のギクシャクした感じが漂っていました。このまま40代を迎え、いつまでこの重荷を背負い続けるのだろうかと、漠然とした不安を感じ始めていました。

アドラー心理学との出会いと「勇気づけ」の光

そんな時、偶然手にした一冊の本が、アドラー心理学の入門書でした。読み進める中で、特に私の心を掴んだのが「勇気づけ」という考え方でした。

アドラー心理学における勇気づけとは、人が困難に立ち向かう活力を与えること、あるいは自らがその活力を生み出すことを指します。それは、失敗を恐れて行動できずにいる人に「あなたにはできる」「失敗しても大丈夫」と背中を押すメッセージであり、また、完璧ではない自分を受け入れ、未来に向けて一歩を踏み出すための心の持ち方であると、私は理解しました。

「人間は、失敗から学ぶ存在であり、完璧である必要はない。重要なのは、失敗を恐れて行動しないことではなく、挑戦する勇気を持ち、そこから学びを得ることだ」というメッセージは、完璧主義の呪縛に囚われていた私にとって、まさに目から鱗が落ちるような感覚でした。これまで自分を追い詰めてきた完璧主義は、失敗への過度な恐れが根底にあったのだと気づかされたのです。

「勇気づけ」の実践:自分と他者への向き合い方の変化

この「勇気づけ」の考え方を知ってから、私は具体的な行動を変えることを決意しました。

自分自身への勇気づけ

まず意識したのは、自分自身への「不完全さの受容」でした。完璧でなくても「まあ、これでOK」と合格点を与える練習を始めました。資料作成では、時間を区切って一度完成させ、必要以上に練り直すことをやめました。

そして、たとえ小さなことでも、目標を達成した際には「よくやった」「できたね」と具体的に自分を褒めるようになりました。例えば、朝早く出社できたこと、一つ困難な顧客対応を乗り切ったことなど、日々の業務の中で見過ごしがちな「小さな成功」に目を向け、それを日記に記録するようにしたのです。

また、ミスをしてしまった時も、以前のように自分を激しく責め立てるのではなく、「ここから何を学べるだろうか」「次はどうすれば改善できるか」という視点に切り替えるように心がけました。失敗を「成長の機会」と捉えることで、過度な自己批判から解放され、精神的な余裕が生まれてきたのです。

部下への勇気づけの実践

次に、私は部下への接し方を大きく変えました。これまでは、部下のミスを指摘し、完璧な成果を求めることが「指導」だと考えていました。しかし、勇気づけの考え方を知ってからは、部下の努力や貢献に目を向け、それを言葉で伝えることに注力しました。

具体的には、部下が顧客から感謝の言葉をもらってきたら「〇〇さんの丁寧な対応が、お客様に伝わった証拠だね」と具体的に褒め、商談がうまくいかなかった時でも、「あの提案はよく考えられていたよ。次はさらに良くするために、どこに焦点を当てるか、一緒に考えてみよう」と、失敗を責めるのではなく、未来に向けた建設的な対話を心がけました。

また、結果だけでなく、そのプロセスで部下がどんな工夫をしたのか、どれだけの努力をしたのかを尋ね、ねぎらうようにしました。

変化と「未来への希望」

これらの実践を通じて、私の心境と周囲の状況は劇的に変化しました。

まず、私自身が完璧主義の呪縛から解放され、仕事が心から楽しめるようになったのです。ミスを恐れなくなったことで、新しい企画を積極的に提案したり、これまで躊躇していた未経験の領域にも臆することなく挑戦できるようになりました。自己肯定感が着実に向上し、「私はこれで良いのだ」と心から自分を受け入れられるようになったのです。

そして、何よりも嬉しかったのは、部下たちとの関係が大きく改善されたことです。私の態度が変わったことで、チーム内の雰囲気が明るくなり、部下たちは積極的に意見を出し、自律的に動くようになりました。以前は私の顔色を伺っていた彼らが、今では笑顔で私の元に相談に来てくれるようになったのです。ある時、部下の一人が「〇〇さん(私)が変わってから、チームの雰囲気が本当に良くなりましたね。安心して仕事に取り組めます」と言ってくれた時は、胸がいっぱいになりました。

この体験を通して、「未来への希望」とは、完璧ではない自分を受け入れ、失敗を恐れずに挑戦する「勇気」から生まれるのだと強く実感しました。そして、その勇気は、自分を勇気づけることから始まり、やがて周囲の人々をも勇気づけ、共に幸福を追求する共同体を築く力になるのだと知りました。

読者の皆様へ:小さな一歩の勇気を

かつての私と同じように、完璧主義に苦しんだり、成果へのプレッシャーや人間関係に悩んだりしている方がいらっしゃるかもしれません。自分はダメだと自己肯定感を低く感じている方もいらっしゃるでしょう。

しかし、どうか安心してください。アドラー心理学の「勇気づけ」は、私たちに「あなたはこれで良い」というメッセージを与え、未来へ向かう活力をくれます。完璧でなくても構いません。まずは、今日の小さな頑張りを自分で認め、「よくやったね」と声をかけてみてください。そして、周りの人の小さな努力や貢献に目を向け、それを伝える勇気を持ってみませんか。

その小さな一歩が、きっとあなた自身を、そして周囲の人々を、温かい未来へと導く「希望の光」となるはずです。アドラー心理学との出会いは、私の人生を大きく、そして豊かに変えてくれました。この体験が、少しでも皆様の勇気となることを願っております。