My Adler Story

営業成績の重圧に押しつぶされそうだった私が、自己受容で手に入れた「貢献感」

Tags: アドラー心理学, 営業職, 自己肯定感, 人間関係, 貢献感

導入:数字の重圧と失われた自信

私がアドラー心理学に出会う前、私の仕事は常に数字との戦いでした。私は営業職として、毎月の目標達成に追われる日々を過ごしていました。達成すれば一時的な安堵感に包まれますが、すぐに次の目標がのしかかります。未達成の月は自己肯定感が大きく揺らぎ、まるで自分自身が無能であるかのように感じていました。

「なぜ、もっと頑張れないのだろう」「周りの同僚はできているのに、自分だけなぜ」

そんな比較と劣等感で心がすり減り、結果が出なければお客様に申し訳ない、会社に貢献できていないという罪悪感にも苛まれました。仕事は好きだったはずなのに、いつしか喜びを感じることはなくなり、日々の業務は重いプレッシャーとして、私を押し潰そうとしていました。特に40代に差し掛かり、若手のような勢いも失われつつある中で、この閉塞感は深まるばかりでした。

アドラー心理学との出会い:自己受容という視点

そんな時、偶然手に取ったのがアドラー心理学に関する書籍でした。以前から自己啓発本を読むことはありましたが、その内容は、これまでの私の思考とは全く異なるものでした。特に「自己受容」という概念に衝撃を受けました。

私はこれまで、自分の良い点、成功した点だけを認めようとしてきました。しかし、アドラー心理学は、不完全な自分をそのまま受け入れることこそが、幸せへの第一歩だと教えてくれました。これは、常に「もっと頑張らなければ」「完璧でなければ」と考えていた私にとって、まさに目から鱗の考え方でした。

そして、「他者信頼」と「他者貢献」という考え方も心に響きました。仕事における人間関係や、自分の存在意義について、これまで漠然と抱えていた疑問に、具体的な視点を与えてくれたのです。

具体的な実践:数字から「貢献」への視点転換

アドラー心理学の教えを、日々の営業活動の中で意識的に実践し始めました。

1. 自己受容の実践:数字への固執を手放す

まず取り組んだのは、数字に対する私の執着を手放すことでした。これまでは、営業目標を達成できたかどうかで自分の価値を判断していました。しかし、「不完全な自分をそのまま受け入れる」という自己受容の考え方を適用し、「例え目標に届かなくても、今日の営業活動でできる限りの努力をした自分」を認めようと意識しました。

具体的には、顧客との商談後、たとえ契約に至らなくても、 「お客様の課題に真摯に向き合い、最適な提案をできたか」 「お客様に役立つ情報を提供できたか」 といった、プロセスや質の部分に焦点を当てて、自分を評価するように変えました。

これにより、一時の結果に一喜一憂することが減り、心が穏やかになったことを感じました。失敗を恐れて新しいアプローチを試すことができなかった以前とは異なり、「たとえ失敗しても、その経験から学べる」と考えられるようになり、心理的なハードルが大きく下がりました。

2. 他者信頼と他者貢献の実践:チームと顧客との関係再構築

次に、チーム内の人間関係にも変化が生まれました。部下や後輩の育成に悩んでいた私は、これまでは「彼らをどうすれば目標達成させられるか」というコントロールの視点を持っていました。しかし、アドラー心理学の「他者信頼」を意識し、彼らを信じ、彼ら自身の成長を応援する姿勢に変えたのです。

具体的な行動としては、 * 彼らの意見をこれまで以上に傾聴し、尊重すること。 * 目標達成のために指示するのではなく、彼らが「どうしたいか」「何に困っているか」を共に考える時間を持つこと。

これにより、部下たちが自律的に動くようになり、チーム全体の雰囲気も格段に良くなりました。彼らが成果を出した時には、私自身の喜びもひとしおでした。

また、お客様との関係においても、「自分が売上を上げるため」という視点から、「お客様の事業にどう貢献できるか」という視点へと意識を切り替えました。お客様の課題を深く掘り下げ、例え自社の製品に繋がらない情報でも、お客様にとって有益であれば惜しみなく提供するように努めました。結果として、お客様からの信頼が深まり、「あなたが担当でよかった」という言葉をいただくことが増え、これが何よりも大きな「貢献感」に繋がりました。

変化と気づき:勇気ある「貢献感」が私を変えた

これらの実践を通して、私の心には大きな変化が訪れました。最も大きかったのは、「自己肯定感」が内側から自然と湧き上がってきたことです。それは、数字の達成という外的な評価に依存するものではなく、私が日々の仕事の中で「誰かの役に立っている」と感じられる、温かい感覚でした。

「貢献感」を得るたびに、私の中に「これでいいんだ」という確かな感覚が芽生え、過去の失敗や不完全な自分を受け入れられるようになりました。営業成績に対する過度なプレッシャーも薄れ、むしろ健全なモチベーションが生まれるようになりました。失敗を恐れずに挑戦する「勇気」を得たことで、以前よりも主体的に仕事に取り組めるようになり、結果的に成績も安定してきたのです。

まとめ:幸福になるための勇気は「貢献」の中に

アドラー心理学は、私に「幸福になる勇気」を与えてくれました。それは、目の前の課題を乗り越えるための具体的な行動指針であり、そして何よりも、自分自身を肯定し、他者と健全な関係を築くための心の持ち方を教えてくれました。

もし今、あなたが職場のプレッシャーや自己肯定感の低さに悩んでいるとしたら、私のように、一度立ち止まって「不完全な自分」を受け入れ、そして「誰かの役に立つこと」に意識を向けてみてはいかがでしょうか。それは決して特別なことではなく、日々の小さな行動の積み重ねです。

その積み重ねの先に、数字や評価だけではない、あなた自身の内側から湧き上がる確かな「貢献感」と、それを基盤とした本当の「勇気」を見つけることができるかもしれません。私自身、これからもこの学びを胸に、より充実した人生を歩んでいきたいと考えています。